趣味の宝箱(インターネット活用研究 番外編)

教科書を捨てて街へ出よう

これは、なんだか勉強嫌いの多くの方々にうけそうなタイトルでありますが、おじさんが言い出したことでは
ありません。それははるか昔、おじさんが浪人生であった時のこと。S台の世界史の名物講師が授業中
にのたもうたことです。
「教科書を捨てて街へでよう」

多くの人にとって、世界史の授業はたいくつきわまりないものであったことでしょう。その授業中に、
教科書を捨てて、と言われたら、皆がもろ手を挙げて賛同する様子が目に浮かびます。

しかし、真意は以下のようです。
机にへばりついていないで、たまにはデパートを、1、2時間ぶらついて来たらいい。
きっと教科書からは得られない貴重なものを発見するだろう。
そして、もう一度教科書を読んでみろ、歴史を肌で感じるだろう。
そうしたら、歴史を学ぶ意味や学びかたというものが、君たちなりに実感できるだろう。

ま、そういうことです。
それで、おじさんも実践してみたことがあります。
デパートをぶらついた後、教科書を再び読んでみました。と、なるほど、再発見がありました。

時代は溯って、11、12世紀。場所はヨーロッパ。
封建制が安定し、生産力が向上し、都市や市民の発展がみられた時代。いわゆる「商業ルネッサンス」
と呼ばれた時代です。
ミラノ、フィレンチェは既にこの時代から、毛織物業で栄えていたのですね。
デパートをぶらついてみたら、いわゆる高級衣料品ではイタリアブランドの山また山を発見しましたが、
教科書の中にその源流を見つけることができました。

さて、デパートをぶらついてみると、イタリアブランドの他に、イギリスブランドがまた多く見つかりました。
イギリスブランドの源流は教科書から発見できるでしょうか。

16世紀。封建諸侯の没落により、絶対王政への移行期です。「イギリスは発達した毛織物工業を
基礎に活発な貿易を行い」という記述がありました。イギリスも古くから、毛織物工業発展の歴史を
もっていたわけです。あの「東インド会社」が設立されたのもこの時代です。

ついでに、付け足しておけば、毛織物を輸出して、新大陸から銀を獲得し、それでアジアから香辛料を
買うというのが、当時の貿易の主要な構造でした。
この時代、毛織物工業の発展した国(イギリス、オランダ)が国力を伸ばし、世界に覇を唱えたという
わけです。
更に、付け足すならば、そのちょっと前まで、スペインも毛織物の貿易を基礎に国力を伸ばし、
あの有名な「無敵艦隊」を誇っていたわけですが、あらたに毛織物の貿易で殴り込みをかけてきた
イギリスと海上権を競って戦争になり、ご存知のとおり無敵艦隊は撃滅されてしまったわけです。
また、スペインの毛織物工業自体、ギルド制手工業から脱皮できず、生産量、品質的にもイギリス
に劣っており、結局衰退しました。毛織物工業の衰退とともにスペイン自体も衰退しました。
しつこく、さらに付け足すなら、最後まで毛織物工業で争ったのは、イギリス、オランダですが、
オランダは原料の羊毛の供給源をイギリスに頼っており、イギリスの加工技術の進展と共に、
しだいに敗北していきます。

デパートで現在発見される、毛織物のブランド品の後ろに、こんな歴史がずらずらとあるわけですね。

なにか、歴史、あるいは歴史の学びかたについて、感じることがあったでしょうか。
無味乾燥な歴史の授業を意味あるものにするヒントがつかめたら、幸いです。

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